人間の骨は0歳からどんどん増え、20歳ごろに骨量がピークに達します。ピークに達した後、40歳くらいまでは骨量は大きく変化しません。
骨は、骨を壊す「破骨細胞」と、骨を作る「骨芽細胞」がはたらいて、常に新陳代謝を繰り返して生まれ変わっており、壊すと作るのバランスが保たれることで骨量は維持されます。
また、骨の新陳代謝は加齢と共に低下し、40歳を過ぎたころから壊すと作るのバランスが崩れ、骨量が減少していきます。
特に女性は50歳ごろから女性ホルモンの変化によって、さらに大きくバランスが崩れ、急激に骨量が減少していくため、骨粗しょう症リスクが高まります。
骨の健康のためには日頃からの十分な栄養摂取や運動を心掛けることが大事ですが、高齢になってから骨量減少に気をつかうことはもちろんのこと、成長期に骨量を増やし蓄えておくこと(骨貯金)に気をつかうことが将来の骨の健康のカギになります。
出展:骨密度の予防と治療ガイドライン2015年版
女性は更年期にさしかかる50歳前後になるとホルモンの変化によって、骨密度が急激に減少します。
子ども世代は骨を蓄える大切な時期です。骨量がピークに達する20歳ごろまでに丈夫な骨をつくることは将来の骨の健康のカギになります。
ところが、近年の子どもは丈夫な骨つくりができているとは言えません。子どもの骨折発生率(2017年度)はおおよそ30年前の1.5倍、50年前の2.4倍になっており、子どもの骨は弱くなっている傾向にあります。
これには食生活の変化や運動の減少、過度なダイエットなど、現代の子ども達の生活スタイルが大きな影響を与えていると言われています。
生涯を通した骨の健康づくりのために、子ども世代に栄養バランスの良い食事や適度な運動、良質な睡眠などを心掛けること、特に食生活においては、骨をつくる基となるカルシウムなどのミネラルを十分に摂取することが大切です。
(注)骨折発生率は、未就学(幼稚園・認定子ども園・保育所)、小学校、中学校、高等学校、高等専門学校を対象に「骨折発生件数/災害共催給付制度加入者数」で計算した。
出展:(独法)日本スポーツ振興センター「学校の管理下の災害」より
仕事も子育てにおいても人生のピークを迎える、40、50代の中高年世代。ところが、骨においては、20歳頃にピークを迎えた最大骨量が徐々に減少し始める時期。若い頃に比べて、カルシウム吸収率も低下し始めます。
いつまでも健康な心身で人生を謳歌するためには、いかに骨量の減少を抑え、骨密度を高めるかが重要な課題となります。骨は目に見えないからこそ、常日頃からのコツコツ対策が大切です。
女性の骨密度には、女性ホルモン(エストロゲン)も深く関係しています。エストロゲンは、骨にカルシウムを蓄え、骨からカルシウムが溶け出すのを抑制するはたらきがありますが、閉経によってその分泌量は減少し、骨密度も比例して低下していきます。
一方、男性は成長期に形成される最大骨量が女性に比べて多く、女性のように急激なホルモンの変化もないため、骨密度を維持しやすいと言えます。しかし、過度な飲酒や喫煙はカルシウムの吸収を阻害し、骨密度低下につながります。他にも、糖尿病などによるインスリン作用不足は、骨をつくる骨芽細胞のはたらきを低下させると言われています。このような生活習慣の乱れによって骨粗しょう症への危険性が高まるので、男性も油断は禁物です。
年をとると目がくぼみ、頬がこけ、肌もたるんできますが、これには「顔面骨密度」の低下が大きく影響しています。顔面の骨密度が低下して、顔面骨(目の下や下あごの骨など)が痩せると骨を覆う筋肉や皮膚が余ります。すると必然的に、たるみやほうれい線が目立ちやすい“老け顔”が加速してしまうのです。骨密度を維持すること=骨のエイジングケアは、見た目の若さや美容にも大きな影響を及ぼします。
出展:Shaw et al , Facial Bone Density: Effects of Aging and Impact on Facial Rejuvenation., Aesthetic Surgery Journal 32(8):937-942.
骨密度の低下は顔から進行。
シワやたるみの原因は顔面骨密度にあり!
人生100年時代ともいわれる現代、厚生労働省が発表した2019年の日本人の平均寿命は女性87.45歳、男性81.41歳となり、女性は7年連続、男性が8年連続で過去最高を更新しています。
そして新たな課題として「健康寿命」を伸ばすことが掲げられています。
「健康寿命」とは、心身ともに健康で暮らせる期間のことで、平均寿命から、寝たきりや要介護状態などの期間を差し引いて計算します。下のグラフのように、わが国の平均寿命と健康寿命の間には男性が約9年、女性は約12年の差があり、その期間は日常生活に制限のある不健康な状態であることがわかります。そして、その原因のひとつに骨粗しょう症があるといわれています。
出展:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年度版
骨粗しょう症は女性に多い病気です。閉経後の女性は、エストロゲンの分泌の低下で骨密度が急激に減少します。そのため、同世代の男性に比べて骨密度が低くなり、骨粗しょう症のリスクも大幅にアップします。
厚生労働省の「国民生活基礎調査結果」(令和元年)では、介護が必要になった主な原因の第3位が骨折・転倒(12.0%)です。骨密度を維持することは、骨折や骨粗しょう症にならないカラダをつくり、健康寿命を延ばすことにつながります。
ロコモティブシンドローム(運動器症候群)、通称「ロコモ」とは、骨や関節、筋肉などの運動器の衰えが原因で、要介護や寝たきりになる危険性が高まった状態のことです。特に骨粗しょう症は、要介護リスクが高く、骨折が1回で終わらず、2回、3回と次々骨折を引き起こすケース(ドミノ骨折)や、さらには骨折で寝たきりになったことで極端に寿命が縮まってしまうケース(骨卒中)もあり注意が必要です。
また、加齢によって筋肉量が減り、身体機能が低下する「サルコペニア」もロコモのひとつ。サルコペニアによる運動量低下は、骨折や骨粗しょう症につながる要因となります。
厚生労働省は「健康日本21」というプロジェクトの中でロコモの認知度を80%以上にすることを目標に掲げ、政策としてロコモ対策を推進しています。